猫の乳腺腫瘍、乳腺癌
※手術の写真がありますので苦手な方はご注意ください。
猫の乳腺部に発生する腫瘤性病変の80%以上が悪性腫瘍で、悪性腫瘍の98%が乳腺癌で占められています。犬と異なり猫では良性の乳腺腫はほとんど存在せず、良性腫瘍は過形成や炎症性病変となっています。猫の乳腺癌は放置しておくとリンパ節や肺などに転移し、致死率も高い病気です。
今回、比較的小さなうちに乳腺癌を発見し、摘出した猫ちゃんがおりましたのでご報告します。8歳の避妊済み猫ちゃん。一度出産経験がある、元地域猫ちゃんということでした。食欲があまりないということで来院され、検査をしたところ便秘がありましたので、食欲不振の原因はそちらと考えられました。加えて、お腹にしこりが見つかりました。しこりに針をさして細胞診を行ったところ乳腺癌の疑いでした。
乳癌は基本的に摘出が主な治療ですが、どんなに小さくても片側の乳腺を全て取る「乳腺片側切除」や両側の乳腺を一度に取る「乳腺両側切除術」、また腋窩、鼠径リンパ節も同時に切除することが推奨されています。
今回、血液検査やレントゲン、エコー検査において転移の可能性が低い事から、飼い主さんとご相談の上、乳腺片側切除術を行う事にしました。
病理検査の結果、やはり細胞診と同様に「乳腺単純癌」という診断でした。また、腋窩リンパ節や鼠径リンパ節への転移はありませんでした。シャム猫は乳腺腫瘍の好発猫種であり、この子もシャムミックスと考えられましたので、今後の事を考え、一ヶ月後にもう片方の乳腺も摘出しました。
小さなしこりで何もこんなに・・と思われるかもしれませんが、放置したのちに腫瘍が化膿してじくじくしたり、肺への転移で呼吸困難を起こしたりと、乳癌は飼い主さんにも辛い思いをさせてしまうこともあります。早期発見が第一ですので、日々からだをさわってあげてください。
乳癌は「初回発情前に避妊する」ことで予防する事ができます。致死率の高い腫瘍ですから、子供を産ませる理由がない場合は、生後4ヶ月以降などで避妊手術をすることをお勧めいたします。
「乳癌で苦しむ猫をゼロにする。」をスローガンとしたキャットリボン運動という活動があります。基礎知識から治療法などについても詳しく掲載されておりますのでご参考ください。