犬の歯が折れた(破折・保存修復)
犬の上顎の大きな歯は第四前臼歯という場所で、下顎の歯とはさみの刃のように噛み合わさり、肉を裂く役割をしています。そのため「裂肉歯」とも呼ばれますが、はさみと同様に、硬いものを噛めば欠けてしまいます。
今回、歯石除去を目的として歯科処置を行い、左第四全臼歯の破折を認め、コンポジットレジンを用いて保存修復を行った子をご紹介します。10歳のジャックラッセルテリアのワンちゃん。口臭と歯石がありご来院でした。全身麻酔下で歯科レントゲンやプロービング、歯石除去を行いました。
歯の表面がでこぼこになってしまい、歯が欠けている事がわかります。歯の破折は、硬いものを噛んだり、すり減ったり、外傷などで起こります。歯髄と呼ばれる歯の神経まで外部に露出している場合と、露出していない場合で治療法が変わりますが、今回はレントゲンやエキスプローラーという器具を用いた検査でも露髄はしていないことがわかりました。
露髄していない場合は、神経を抜く事はなく、つめものをする保存修復という方法を取ります。処置に先駆けて、周囲の歯の歯石除去や洗浄、乾燥を行います。
切削中、露髄し出血したためペーパーポイントやボスミンで止血し、その後は直接歯髄覆罩法(歯髄の上に直接覆罩できる材料を用いて機械的、化学的に保護する)という方法で水酸化カルシウムを用いました。その後グラスアイオノマーセメント、コンポジットレジンといった修復物で充填、研磨して形を整えました。
今後は修復した場所が脱落しないか確認するとともに、再度硬いものなので破折しないよう生活環境を改善する必要があります。デンタルケアなどで与えられる骨、アキレス腱、ガムなどが歯をかけさせる大きな原因となっています。家庭のはさみで切れないものは犬や猫には与えないようにしましょう。
※2022年3月以降、根管治療はすべてラバーダム防湿を実施しております。