犬の不正咬合(乳歯晩期残存による)、外科的矯正

わんちゃんのお口のトラブルは、早いと子犬の頃から起こります。すなわち生まれつきの噛み合わせの問題(不正咬合)と、乳歯が抜けないで残ってしまうこと(乳歯晩期残存)です。

不正咬合には上顎が下顎より出ている(オーバーバイト)、下顎が上顎より出ている(アンダーバイト)などの、骨格から生じる骨格性不正咬合と、歯列の中の個々の歯について起こる歯性不正咬合があります。子犬の時に乳歯が脱落せずに長く存在すると、永久歯が正しい位置に出てくる事が出来ず、歯の隙間が狭く歯周病になったり、噛み合わせが悪くなる歯性不正咬合が起こります。

一般的に乳歯の抜け替わりの影響で良く認められる不正咬合は、下顎の犬歯の舌側転移といって、下顎の犬歯が内側に位置して、噛んだときに上顎に当たってしまうケースです。

この状態は上顎に炎症を起こしたり、痛いがために口を閉じないため、フードをポロポロ落としたり引っ張りっこなどの遊びもしなくなったりします。

通常、子犬は生後4ヶ月くらいから永久歯が生え、乳歯が抜けた場所に移動しながら萌出してきます。生後10ヶ月ほどまでは永久歯は移動すると言われていますので、少なくとも生後10ヶ月までには不正咬合は治療するのが理想です。

治療としては、残っている乳歯を抜歯する事と、それでも上手くいかなそうなときは、外科的矯正といって、抜いた乳歯を削って楔(くさび)を作り、永久歯と歯肉の間に差し込んで角度を矯正します。

抜いた乳歯たち

抜いた乳歯たち

楔にする

乳歯を抜いた後、永久歯の下顎犬歯の内側に楔を左右とも打ち込みます。楔はその後脱落するか吸収されるのでそのままで大丈夫です。

 

処置前

処置後1週間

処置前

処置後1週間

およそ一週間で、正しい位置に犬歯が移動しています。繰り返しになりますが、永久歯が移動するのは生後10ヶ月までで、そもそも犬歯の永久歯が生えきて2週間以上経っても乳歯が抜けない場合は抜歯の対象となります。様々な要因で不正咬合は起きますが、子犬〜生後半年までは月に一回の歯科検診、永久歯が生えてきたら、避妊や去勢手術とともに抜歯が必要か、タイミングを1〜2週間ごとにご相談するのが良いと思います。

 

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