猫の歯が抜けた??
気がついたら下顎の犬歯が抜けていたという猫ちゃん。まだ5歳ということでした。
明らかな歯周病などはありませんでしたが、下顎の抜けたという犬歯の、すぐ隣の第一前臼歯の歯肉が赤かったため、全身麻酔下で検査することにしました。
歯科用レントゲンで撮影すると、実は下顎の犬歯は抜けておらず、途中で折れた歯根が残っている事がわかりました。
猫の歯が途中から折れてなくなっているように見えるときは、吸収病巣という病気で歯茎から歯が溶けてしまう場合と、強い力が加わって折れてしまう破折の場合があります。今回は斜めに折れている事からなんらかの外傷で折れた可能性が高いと判断しました。
また、歯茎が赤くなっていた第一前臼歯は歯槽骨(顎の骨)が吸収されており、抜歯が必要な歯周病となっていました。下顎犬歯の破折から歯槽骨の吸収が起こり、隣の第一前臼歯まで進行したと考えられました。
プローブという器具を使った検査でも、歯根分岐部(歯の根っこの枝分かれ部分)を貫通しており、重度の吸収があることがわかります。
歯肉を切開し歯槽骨を露出、折らないように丁寧に抜歯しました。
抜歯した後はギザギザになった歯槽骨を滑らかにし、吸収される糸で縫合しました。
今回は飼い主さんが歯がないことに気づき、受診してくれた事で早期に処置ができました。放っておいたらいつまでも折れた歯の根っこが残り、感染を起こし、下手をすると顎に穴が開いたかもしれません。
ハアハアするわんちゃんと違って猫ちゃんの歯はおうちで見てもらう事が少ないですが、なにかおかしいな?と思ったら動物病院に受診しましょう。また今回のようなケースは歯科用レントゲンがあると非常に有用ですので、なるべく歯科用レントゲンのある病院への受診をおすすめいたします(とくに猫)。