猫の脾臓の腫瘍、形質細胞腫(骨髄腫関連疾患 FMRD)

猫の脾臓の腫瘍、腫瘤は犬ほど多くありませんが、腫瘤が形成されている場合は悪性であることが多いです。今回、痩せてきたという主訴で来院された猫ちゃんの脾臓の腫瘍についてご報告いたします。

13歳の猫ちゃん、最近痩せてきたということで来院されました。血液検査にて黄疸と貧血が認められましたので、原因を調べるためにレントゲン検査と超音波エコー検査を行いました。上の画像の様にエコー検査にて2センチほどの丸いしこりを脾臓の中に認めました。

針を刺して細胞診を行いましたが確定に至る結果が出ませんでした。脾臓は赤血球を壊す場所でもあるため、脾臓に異常があると貧血をきたす場合が多いです。貧血改善のためにも脾臓を摘出することになりました。

状態が悪いため輸血を行いながら十分に麻酔に気をつけながら実施。

お腹をあけて外側に出した脾臓。

全身麻酔で輸血をしながら、慎重に脾臓を摘出しました。

お腹をとじたところ

摘出した脾臓

なんとか無事手術が終了し、摘出した脾臓は病理検査を依頼、免疫染色もしました。結果として、「形質細胞腫」という診断でした。形質細胞腫はその名の通り形質細胞というものが腫瘍化したものです。形質細胞はリンパ球のB細胞が分化したものです。この病気は猫では稀ですが、猫の形質細胞に由来する腫瘍は大きく「猫骨髄腫関連疾患FMRD」と呼ばれ、難治性のものが多いとされています。治療としては外科、抗がん剤、放射線治療があります。病理結果から分化度の低いタイプとされ、また全身状態の悪さから術後の抗がん剤もご提案しましたが、飼い主さんのご希望で緩和ケアのみ行うこととしました。皮膚にも転移と思われる腫瘍が増え、ステロイド剤や食欲増進剤のみを処方し、手術から1ヶ月後に残念ながら亡くなりました。

形質細胞腫、骨髄腫は人や犬では比較的緩慢な挙動、治療によって予後が良好にコントロールされる場合もありますが、猫は異なります。また症状が特徴的でないため、見落としやすい疾患ともいえます。定期的な健診で早期発見することが大切です。

 

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