猫の口腔内の腫瘍、髄外性形質細胞腫(猫骨髄腫関連疾患FMRD)
猫の形質細胞腫はまれです、と前回投稿いたしましたが、今回も猫の形質細胞由来の腫瘍です。当院は歯科に力を入れている分、口腔内腫瘤病変の患者さんが多くいらっしゃいます。猫の口腔内腫瘤は、扁平上皮癌、リンパ腫、腺癌が多く、非腫瘍性のものですと好酸球性肉芽腫という潰瘍を作る免疫の病気や、歯周病などで歯の根っこが腐って膿が溜まる根尖周囲病巣が多いです。
今回はそのどちらでもない分、非常に珍しい症例としてご紹介いたします。
シニアの猫ちゃんで、クッシング病が根底にあると思われる糖尿病治療中の猫ちゃん。ほっぺたが腫れてきてセカンドオピニオンとして来院。左頬が腫れておりましたが、歯周病などはあまりなく、腫瘍を疑う所見でした。細胞診を実施すると「リンパ腫あるいは髄外性形質細胞腫を疑う」という結果でした。形質細胞腫も由来の形質細胞はリンパ球のB細胞が分化したものですから、鑑別が非常に難しいです。診断により治療法が変わるため、飼い主さんと相談し、鎮静下でほっぺたの内側から検査部位を切り取る組織検査と、免疫染色を行いました。
結果から、髄外性形質細胞腫という診断になりました。聞きなれない言葉ですが悪性が多く、進行も早いとされております。飼い主さんと相談し抗がん剤治療をご提案しましたが、もとからの糖尿病、インスリン投与などもあり希望されなかったため、経過観察となりました。幸いなことに腫瘍は外へ外へと大きくなりましたので、採食は比較的可能なようでした。
腫瘍に明らかな転移がなく、口の中に限局していたこと、食欲がずっと維持していたことから無治療でしたがその後半年間頑張ってくれました。口腔内腫瘍は多くみられますが、病気により挙動、予後が変わりますので早めの診断が必要です。