犬の歯が欠けた、折れた(破折・抜髄根管治療)
犬の歯は思いのほか欠けやすく、プラスチックのおもちゃ、骨、ひづめ、鹿の角、ガム、硬いチーズなどで簡単に欠けてしまいます。上顎の一番大きな歯が第四前臼歯、下顎の一番大きな歯が第一後臼歯といって、この二つが肉を切り裂いたりするときに必要なペアです。この二つの歯は裂肉歯といって犬が噛むときに非常に大切な歯ですが、最も欠ける場所でもあります。
この歯で石臼のようにすり潰すのでなく、ハサミのように裂き、食べやすく小さくして飲み込みます。そのため、硬いものを食べるとハサミのように歯が欠けてしまうのです。歯が欠けて中の歯髄(神経)が出てしまうと、噛むたびに痛みが生じたり、そこから細菌感染をして根っこが腫れてしまう(根尖病変)こともあります。そのため放置は基本的に厳禁です。治療としては、出てしまった歯髄を全て抜く抜髄根管治療(歯内治療)と、抜歯があります。若い子で、欠けてすぐ発見した場合は歯髄を少し削る、神経を全て取らない覆髄法などもあります。
今回、3歳のコーギーちゃんで破折露髄した第四前臼歯の根管治療をしましたのでご紹介いたします。
プラスチックのおもちゃで遊んでいて歯が欠けてしまったコーギーちゃん。歯磨きを嫌がるため飼い主さんが気付きました。全身麻酔をかけ、歯のレントゲンを撮ると幸いなことにまだ歯根まで病変が及んでいないようでした。
第三前臼歯は根っこが三つあります。歯の神経が見えているところと、前、後ろに穴を開け、3本の神経を針金のような金属の棒でなるべく取り除いて綺麗にして、中(根管)をきっちり奥まで洗浄します。
そのあとガッタパーチャと呼ばれる樹脂を殺菌効果のあるシーラーという糊と共に根っこに重鎮、その後コンポジットレジンという被せ物を詰めて終了です。
術後は美味しそうに普通にフードを食べ、元気に帰っていきました。今後6ヶ月後、1年後、2年後と歯科レントゲンにて治療の経過を見ていく必要はありますが、食べ物を噛んで食べる楽しみを継続できることは良いことです。当院は治療の成功率を上げるために、人の歯医者さんと同じようにマイクロスコープ、ラバーダム防湿、バイオシーラーなどを用いて施術しております。歯が欠けたら放置せず、ぜひ受診してくださいね。
※追記
2年後の経過です。固いものを与えるのを避けていただいており問題ないようでした。全身麻酔下で歯科レントゲン撮影、およびスケーリング研磨を行い終了です。