チワワの子宮蓄膿症・陰部からの出血
※手術の写真があります。
※個々の症例に対し、お電話のみでのご相談はお受けしておりません。一度診察にいらしてください。
まず最初に個人的経験から言いますと、チワワという犬種は、避妊手術を実施されていないご家族が多い印象です。おそらくは「体が小さいから全身麻酔が負担になる」と飼い主さんが思っている、もしくはそう獣医師に言われたということではないかと思います。その結果、避妊していないがゆえに生じる病気にかかることも多くなります。代表的なものとして子宮蓄膿症、乳腺腫瘍があります。今回は子宮蓄膿症についてのご紹介です。
初診、発情(生理)が終わったと思ったらまた出血していて止まらない。この3日ぐったりしてご飯も食べないというわんちゃん。8歳のチワワちゃんでした。みると、陰部からの出血でお尻の部分が真っ赤に染まり強烈な匂いを発していました。血液検査、エコー検査、レントゲン検査などを実施し、子宮の中が異常に拡張していること、血液の白血球の上昇、CRPという炎症マーカーの上昇から子宮蓄膿症を疑いました。
子宮蓄膿症は子宮の中の細菌感染により膿が溜まる命に関わる病気です。細菌が作る毒素(エンドトキシン)により、腎不全や播種性血管内凝固(DIC)を呼び起こし死に至るケースもあります。治療は第一選択として外科的に卵巣子宮を摘出することです。全身状態が悪い場合は点滴や注射などをまず行います。内科的な治療もありますが、再発する可能性や副作用の可能性も十分ご理解いただく必要があります。
チワワちゃんは、出血による貧血はあるものの、幸い内臓疾患や心臓病などがなかったため、入院し点滴をしながらその日の夜に緊急手術を行いました。お腹を開けると子宮は拡張し、ボコボコと嚢胞状になっていました。
袋から液が漏れ出さないように慎重に卵巣子宮を摘出し、おしりの血だらけの毛も綺麗にして手術は終了しました。摘出した子宮の中に針を刺すと、赤黒い血液状の液体が採取されました。細菌培養・感受性試験に依頼して、どのような抗菌薬が適しているか調べました。
わんちゃんは翌日からは出血もなく、少しずつ元気を取り戻しました。血液の検査データも改善しつつ、食事も摂るようになったため3日後に退院。1週間後にお腹を縫合していた部分を抜糸して終了しました。
子宮蓄膿症は犬の場合中高齢になると発情後に発症することが多いです。症状としては食欲不振、たくさん水を飲む、尿が多い、お腹が張る、陰部から膿や出血があるなどです。治療は卵巣子宮摘出ですので、いわゆる避妊手術がいちばんの予防です。中高齢になり症状があるなかで手術を受けるよりは、生後半年などで健康な子が手術を受ける方がよほどリスクは低く、費用もかかりません。将来繁殖をお考えでない場合は、避妊手術をぜひともお薦めいたします。体が小さいからという理由は麻酔がかけられない理由にはなりません。ぜひ、獣医さんに相談してください。