石を飲んだ小型犬

偶然にも石が胃の中から見つかった子のご紹介です。乳歯が残っていると相談のあった小型犬のわんちゃん。もう1歳ですが奥歯の乳歯が残っており、麻酔をかけて抜歯することをお勧めしました。そこで、全身麻酔が大丈夫か確認するため、血液検査と胸部レントゲン写真を撮りました。すると・・・

 

お腹の中になにか白い塊が写りました。

横向きの写真を拡大したところ

仰向けの写真を拡大したところ

レントゲンでは金属、骨など硬いものが白く写る特性があります。なにか硬いものがお腹の中、それも胃の中にあることがわかりました。飼い主さんにお話を聞くと以前も異物を食べてしまい吐かせたことがあるとこのことでした。そこで心当たりはないものの、何かを食べてしまった可能性が高いことがわかりました。大きさ的に胃から流れても腸で詰まることも考えられたため、相談の上、吐かせる処置をしました。3回ほど朝食べたフードを吐いたにも関わらず、異物は吐くことができませんでした。もういちどレントゲンを撮ると、胃の中がからになったこともあり、異物の輪郭がはっきりしてきました。

胃が空の状態で再度撮影

再度撮影

拡大したところ

拡大したところ。角があり硬そうなことがわかる。

白くて硬く、尖った箇所もあるようで、かつ吐いても吐けない重量のあるもの。「散歩中に石でも食べたのではないか」と尋ねると、飼い主さんは、子犬の頃はよく散歩中に石を噛むことがあったとのこと。

胃の中に異物がある場合は、一般的に

①吐かせる

②内視鏡で摘出する(全身麻酔)

③開腹して胃から直接摘出する(全身麻酔)

④胃腸から流れて便から出るのを待つ

という選択肢になります。一番目と四番目は、吐かすことができなかったことと、比較的大きめで鋭利なかたちのため、腸を傷つけたり詰まる可能性があること、また何を食べたかわからず、中毒性のあるものであった場合は胃腸から吸収してしまう恐れがあることから却下しました。一番良いのは内視鏡で異物を確認しそのまま摘出、もしくは鋭利なもので食道を通過させるのが危険であれば、その後開腹して摘出することです。開腹はお腹を開け、さらに胃を切開するため数日入院が必要な処置になります。またお腹を縫うので後日抜糸が必要です。内視鏡での摘出で成功すれば日帰りですしお腹を切ることもありません。しかし当院には内視鏡の設備がないため、その場合は他の病院に転院することになります。飼い主さんとご相談しましたが、もともとのかかりつけ病院にも内視鏡がないこと、歯の処置も同時にできることから当院で開腹、摘出することになりました。吐かせてお腹が空っぽだったのもあり、そのまま午後手術となりました。

全身麻酔をかけお腹をあけて胃を触ると明らかに硬いものが触れました。

お腹から胃を外に出して確認

胃を切開し、異物を取り出しました。やはり大きな「石」でした。

慎重に石を取り出しているところ

角があり尖っていた。

胃の中、また小腸などにも異物がないか異常がないか確認します。

小腸を引っ張り出して確認。

切開した胃は吸収される糸で漏れないようにしっかりと縫合します。

 

その後、乳歯の抜歯も終わり終了しました。手術翌日からお水、流動食を与え三日で退院しました。1週間後にお腹の糸を取って終了です。

抜糸するときの写真

ちなみに飼い主さんは摘出した石に見覚えはないようでした。散歩中にでも拾い食いしたのでしょう。子犬は思わぬものを食べてしまいますので注意が必要です。異物を摂取した時は、その後嘔吐や食欲不振などがあれば気がつきますが、胃の中で止まっていると気が付かないことがあります。院長自身の経験として、1年前に飲み込んだ散歩用のリードを大型犬の胃から摘出したことがあります。その子は全く吐くこともなく食欲もあり1年経過していました。怪しいなと思った場合は、症状がなくとも病院を受診することをお勧めします。

例えばこの石は角があり、きっとこのままだと慢性的に胃炎を起こしたでしょう。偶然とはいえ摘出できて本当によかったです。

 

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