トイプードルの皮膚のしこり、イボ、毛芽腫

初診のトイプードル7歳の女の子。くちびるのしこりが徐々に大きくなってきたとのことで来院されました。

左口唇部の皮膚腫瘤

唇部分で1.5cmほどの大きさでしたから、手術で摘出するならば、切除辺縁をどこまで設定するかが問題です。仮に悪性腫瘍だとすると、しこりのギリギリで切除してしまうと、取り残しになってしまうことがあります。そのため、腫瘤がなにものであるかを知るために、しこりに針をさして顕微鏡で確認する細胞診を行いました。

細胞診の顕微鏡画像。淡い紫色のつぶつぶは赤血球。中央の紫色が採取された上皮性の細胞。

細胞診では上皮性の細胞が塊状に採取され、検査センターからは「毛芽腫の疑い」と返ってきました。毛芽腫はかつて基底細胞腫とも呼ばれ比較的良性の腫瘍です。しかし場所が上のくちびるなため、これ以上大きくなると切除後の顔の形が変わってしまったり、最悪皮膚がよらない可能性もあります。そのため早期に摘出手術を行うこととなりました。

全身麻酔をかけ、腫瘤サイズを確認しているところ。

口の粘膜には腫瘤は認められない

バリカンでかり、消毒したところ

幸い唇の裏側、すなわち口の粘膜には影響がなかったため、外側から腫瘤を剥がしていくことにしました。

神経血管などが走っており止血に苦労しました

縫合したところ。あまりひきつらないように縫うことができました

摘出した腫瘤は割面をいれホルマリン固定し、病理検査に出しました。結果はやはり「毛芽腫」でした。唇は動きがあり、舌で舐めて化膿することもあるため抗生剤を処方し、2週間後に抜糸しました。

抜糸前。毛が生え目立たなくなっている

抜糸

腫瘤は取り切れていたため、治療は終了です。毛芽腫は犬猫において良性の皮膚腫瘍で、頭や首に発生することがあります。大きくなると引っ掻いてかさぶたになったり、手術が困難となることもあります。なるべく小さいうちに診断し、切除することで良好な経過をとることができます。小さなイボに気づいたら、まずは病院に受診してください。

TOP