怖がりな猫ちゃんにガバペンチンを投与し、健康診断。

「うちの子、家ではとっても大人しいいい子なんです!!」

私の腕に噛みついて、ぶら下がっていた猫ちゃんの飼い主さんからの言葉です。そうなんです、おうちでいい子でも、動物病院などの違う環境では豹変してしまう子って多いです。これは猫ちゃんは決して悪くはありません。「病院に慣れてもらおう!」という飼い主さんと病院側双方の時間、知識、準備が足りない場合や、猫ちゃんの生まれ持った気質などが原因だったりします。最近は元野良猫を保護して飼う飼い主さんも多く、これまた通院困難が多いケースです。また一度こういった経験をしたことのある猫ちゃんは、キャリーケースに嫌な思い出をインプットされてしまうため、おうちでキャリーケースを見せると逃げてしまう、病院に連れ来れなくなってしまうというケースもあります。さらに飼い主さんも「うちの子は病院が嫌いなんだ。病院の先生やスタッフさんに怪我をさせてしまうかもしれない」「猫ちゃんのストレスかかってかわいそう」となり、病院になかなか猫ちゃんを連れてこなくなります。そして、いよいよ具合が悪くなってから大嫌いな病院に連れていかれ、さらに病院が嫌いになるという悪循環となります。

前置きが長くなりましたが、恐怖でパニックとなり、安全で丁寧な診察ができないとあらかじめわかっている場合、事前に猫ちゃんに「ガバペンチン」というお薬を飲んできてもらうという方法があります。ガバペンチンは人のお薬で、基本的にてんかんなどの発作を抑える抗てんかん薬です。このお薬は世界ねこ学会(ISFM)の「猫に優しい取り扱いガイドライン」でも推奨されているもので、100〜200mg/頭を来院する前に飲ませてもらいます。飼い主さんからのお話ですと、早いと飲ませた15分後くらいから効き始め、キャリーケースへの移動も楽になるそうです。お薬の効果は2,3時間後がもっとも高くなると言われています。

普段ならカラーなし、タオルなしでフリーにすることはできない猫ちゃん。

 このお薬を使うと、私たちの経験上では今まで全力で拒否、力強く蹴ったりジャンプしたりシャーシャーしてしまう子が、力が少し入らなくて、ちょっとシャーの声が小さい、検査時での抵抗が少ないという感じです。抵抗が少ないと速やかに検査を進めることができ、時間短縮、そしてなにより変に力を入れる必要がなく、猫ちゃんへの負担も軽くなります。徐々に薬の効果が減弱するのか、抵抗する力が強くなる感じはあるため、あまり長時間お待たせしないよう、計画的に進めていきます。

いつも低く唸っていた子もおとなしい

なかには検査が終わって帰宅した後も少し足取りがフラフラしていた子もいるそうです。8時間は歩様にふらつきがある可能性ということですので、キャットタワーなどには登らせないようにしたほうがいいでしょう。お薬の効き方は個体差があるため、その子に合わせてご相談させてください。

ちょっとぼーっとしている子も。

恐怖で抵抗しながらの検査は、行う我々も心が折れそうになります。しかしこのお薬を使うようになってからは「耳をつんざく叫び声」のようなものもなくなり、非常にスムーズです。高齢猫ちゃんへの影響の調査されており、血圧、甲状腺、腎臓への負担などを考慮しながら使用することもあります。ぜひご相談ください。

TOP