グレート・ピレニーズの歯肉増殖症(歯茎の腫れ)

 「涎が最近多い。あと、うちの子は歯が抜けてしまったようだ」というご相談でいらっしゃった5歳のグレート・ピレニーズという大型犬の飼い主さん。確かに口の周りの白い毛が涎で茶色く汚れていました。口の中を確認すると、歯茎が腫れてボコボコになっておりました。また、どうやら歯は抜けたのではなく、腫れた歯茎に埋もれているようでした。歯茎の腫れは歯周病や腫瘍など様々な原因が考えられますので、全身麻酔下で確認しながら処置を行う事にしました。

グレートピレネーズ

口の中を確認すると、口の中全周にわたり、歯茎が腫れていることがわかりました。

 

腫れた歯茎

腫れた歯茎

腫れた歯茎

メスで何カ所か腫れた歯茎を切除し、病理検査のための検体としました。その後、歯周病の有無を確認しながら、正常と思われる高さまで電気メスで、過剰な歯茎を切除しました。

歯肉切除後

病理検査の結果は「歯肉線維性過形成」という診断でした。これらは抗てんかん薬やシクロスポリンなどの特定の薬物投与に関連して生じる事もありますが、その可能性が低い場合は遺伝性の歯肉増殖症を疑います。歯肉増殖症は薬物による反応のほかでは歯垢による慢性炎症によるもの、またコリー、シェットランドシープドッグ、その他大型犬に見られる遺伝性の性質も考えられています。今回、病理検査結果と犬種がグレート・ピレニーズと大型犬であることから遺伝性の歯肉増殖症と考えられました。

 一度歯肉を切除しても、今後また歯垢、プラークに過剰に反応し再び増殖することが考えられました。今後は歯磨きをメインとしたプラークコントロールと、再び歯肉が増殖した際は、全身麻酔下でのケアを提案しました。

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